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セルフポートレート800枚超。「ワタシ」を問う森村泰昌の迷宮が京都市京セラ美術館に出現
2022-04-14
セルフポートレート800枚超。「ワタシ」を問う森村泰昌の迷宮が京都市京セラ美術館に出現

 名画の登場人物や歴史上の人物、女優などに扮するセルフポートレート作品で知られる現代美術家・森村泰昌。その森村の京都における1998年以来の大規模個展「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」が、京都市京セラ美術館の新館
東山キューブで開催されている。会期は6月5日まで。


 森村は1951年大阪市生まれ。70年代に京都市立芸術大学で学び、1985年、ゴッホに扮したセルフポートレート写真でデビュー。以降は国内外で作品を発表してきた。近年のおもな個展に「森村泰昌:自画像の美術史―『私』と『わたし』が出会うとき」(2016、国立国際美術館)や「ジャム・セッション
石橋財団コレクション×森村泰昌 M式『海の幸』ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」(2021、アーティゾン美術館)などがある。


 今回の展覧会は、京都市京セラ美術館の開館1周年記念展のひとつとして開催されている。1985年より森村が撮りためた800枚を超えるインスタント写真による「M式
写真回廊」や、朗読劇を特設空間で体験することができる「声の劇場」などで構成された本展は、35年超の森村のキャリアを総括するような展覧会だ。


 本展の会場には5つの入口があり、どこからでも入ることが可能だ。それぞれの門には「鏡影門」「だぶらかし門」「迷宮門」といった名前がつけられており、名称の由来に想像がかきたてられる。


 会場に足を踏み入れると、天井から伸びたカーテン状の布が来場者をむかえる。布には森村が芸術家や女優といった著名人に扮した小型のセルフポートレート作品が展示されており、森村はこの展示を「M式
写真回廊」と名づけている。

 「M式
写真回廊」のカーテン状の布は、展覧会タイトルでも示唆されているとおり「迷宮」といった様相を呈している。この布の壁を組み合わせてつくられた通路をめぐりながら、来館者は800点を超える写真作品を見ることとなる。


 これまで、そのほとんどが発表されてこなかったという作品群。脈々とつくり続けられた結果であろうその圧巻の枚数は、森村の制作姿勢の一貫性を伝えている。そして同時に、その多彩な顔を見れば見るほど、森村の実存が希薄になっていくという「ねじれ」も感じることができるだろう。


 また、一部のカーテンには切れ目が入れられており、そこからは森村が着用した衣装の数々を覗き見ることができる。この「衣装の隠れ家」では、森村が撮影時に身にまとう衣装を、いかにつくりこんできたかをうかがい知る機会になるはずだ。

 さらに、会場のカーテンのなかには「夢と記憶の広場」と名づけられた、ふたつの両面モニターによって新作の映像作品が上映される空間も隠れている。ここでは「M式
写真回廊」で展示されていた写真の人物たちが動く様子や、森村が自らに化粧を施して他者になりかわる過程などを見ることができる。


 「声の劇場」で行われる朗読劇《影の顔の声》にも注目したい。こちらは各回入れ替え制で整理券を配布する展示となっており、日に13回、各回40分ほどの長さで上演される。カーテンの中にある劇場には、中央に畳と香炉、それを取り囲むように座席が配置され、暗闇のなかで音と光の演出を織り交ぜつつ、森村が90年代に創作した顔にまつわる奇妙なミステリ調の物語が上演される。ぜひ、現地で体感してもらいたい。


 本展はどの入口から入っても、どのような順序で見ても、成立する展覧会だ。ぜひ、会場を異なる道のりで繰り返し歩きながら、すべてが森村であると同時に森村ではないという、幾多の「ワタシ」が生み出す可能性を感じてもらいたい。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/2883933e832986f385368c30c7ef065f17295e1c

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