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プレイバック!美術手帖 1972年4・5月号・特集「年表:現代美術の50年」
2022-12-08
プレイバック!美術手帖 1972年4・5月号・特集「年表:現代美術の50年」

60年代美術の総括から見えてくるもの


 「現代美術の50年」と題された本特集は「60年代美術の総括」を目指した一大プロジェクトだった。400ページを超える誌面の大半は、1916年から68年までの年表で占められている。この「50年」という時代区分は、特集が刊行された72年を起点に過去へ遡ったものだ。それに対して今年は、本特集が刊行されてから50年後の未来である。


 編者は刀根康尚、彦坂尚嘉、赤塚行雄の3名。そこに編集部6名(+アルバイト3名)が加わり、ライトバン6台分の資料をひっくり返しながら、8ヶ月もの月日をかけて本特集は制作された。この事実だけでも、『美術手帖』の歴史のなかでこの特集がいかに特別なものであったかがわかるだろう。


 ところで、編者の3名は美術史の専門家ではなかった。とくに彦坂と刀根は当時20~30代の若手作家である。なぜ、彼らは年表の制作にここまで注力したのだろうか?その訳は時代区分に隠されている。この年表の特徴は、日本現代美術の50年間を「1916~60年」と「1955~68年」の2つに区分しているところにある。しかし従来の美術史では、少なくとも「戦前」と「戦後」を区分することが一般的だ。この時代区分から見えてくるものはなんだろうか。


 編者によると、前者は60年代美術の「前史」に、後者は「本史」にあたるという。ここで注目されるのは、その「前史」の始まり、いわば60年代美術の祖と言える大正アヴァンギャルドだ。編者は、これまで大正アヴァンギャルドは「前衛芸術の最初の徴候として記憶されるにとどまって」きたが、実際には「60年代芸術が荷った課題は、大正アヴァンギャルドの運動の過程を、位相を異にしながら反復している」と述べる。つまり60年代美術を総括するために、その歴史を大正アヴァンギャルドにまで遡り、接続することがこの年表の大きな狙いだったのである。


 このように、戦前と戦後に断絶でなく接続を見出そうとする視点は、古くは菊畑茂久馬の戦争画をめぐる議論にも見出せるし、近年では卯城竜太の「公」をめぐる議論にも見出せる。その意味において、本特集のアクチュアリティはいまなお有効なのだ。


 ところで、本号の見どころは年表以外にもある。赤瀬川原平らが構成を務めた「壮烈絵巻」(5月号)は、当時の空気感を面白おかしく伝えるドキュメンテーションだ。ほかにも「今月の焦点」や「読者から」も面白い(例えば「読者から」では、ある読者が前号の投稿者へ「一言申させていただきます」と議論を吹っかけている)。前述した年表も、こうした議論喚起的な時代の空気のなかで生み落とされたものなのである。


(『美術手帖』2022年10月号、「プレイバック!美術手帖」より)

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/9e686f8fdfb826f1ff30791f36323ada50faa799

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