「サンクチュアリ」も「めんたい」も、世界を狙う根っこは同じ
前回(関連記事「前代未聞の大相撲エンタメ『サンクチュアリー聖域ー』ができるまで」参照)は、その珍しさの理由でもあろう「力士に見える俳優」を揃えるという壁を、どうクリアしたのかを主に伺ったわけですが。
江口カン監督(以下、江口):はい。
――答えは2年がかりで俳優さんに体重を増やしてもらい、相撲の稽古を積んでもらうことだったという、驚愕(きょうがく)の事実でした。さて、今回は映像作品としてのお話をお聞きできたらと思います。
江口:まあ、いろいろ工夫はあるんですけど、所々で、「NHKの画角」を入れるというのが面白かったです、やっていて。
――ああ、相撲中継のテレビ画面の。確かにぱっとあの画角になった瞬間に、気持ちがぱっと「これ、見たことあるぞ」と落ち着きますね(笑)。
江口:そう。相撲といえば、みんなが一番見ている画があれじゃないですか。
――そうですね。
江口:あの見慣れた画角と、めちゃくちゃ力士の至近距離からの、カメラが土俵の上に上がって撮っているものが混在しているのが「サンクチュアリ」の特徴で。
――そうか、そうですよね。あり得ないアングルで撮っているのと、いつもの見慣れた画角が両方あるんですね。
江口:そうそう。あのNHKの、あれを使うことでみんなの中での脳内補完がしやすいというか。困ったらNHKのアングルに戻る(笑)。
●「サンクチュアリ」の画が決まっている理由は
――その画角、アングルと強く関係しているだろうと思うんですが、「サンクチュアリ」は……これはぜひ予告編なりを見ていただきたいところですが、画がいいです。相撲があんなにかっこいいものだったとは。あれはどこから来るものなんですか。そんなに簡単には言えないと思いますが。
江口:うれしいことに、よくそう言っていただけるんです。画がいいというのは、僕の中の答えは簡単で、今回は画作りがスポイルされなかったからですよ。
――え?
江口:画はね、どうもね、何かやたらこうスポイルされがちなんですよ。
――映画で画がスポイルされるんですか。
江口:される。
――ええっ?
江口:画をよくしようと思うと、やっぱり機材だとかスタッフだとかが余計にかかるんです。
――ああ! そういうことか。なるほど。
江口:そしてなにより、時間がかかるんですよ。いい画を撮ろうとすると。
僕が、脚本という文字情報を映像に変換する作業の中で、一番意識しているのは、「文字だけでは表現できない映像や音像を作ること」です。例えば、ごくわずかな表情や動きのほうが、長いセリフよりも鮮やかに表現することは、これはもうよくあります。
――ああ、そうか。映像のほうが気持ちが伝わること、確かにありますね。
江口:だけど「画はちょっとやっぱり予算の都合がありますから、もう妥協しましょうよ」となりがちなんですよ。
――映像作品なのに画に妥協。
江口:そう。