平等院鳳凰堂、建立時の鉄金具に金メッキの可能性「重要な発見」
アマルガム鍍金は、水銀が他の金属と溶け合う性質を生かした原始的なメッキ法。金を溶かした水銀を銅などの地金に塗り、熱を加えて水銀だけ蒸発させる手法で、微量の水銀が地金の上に残るため痕跡が分かる。東大寺(奈良市)の大仏に使われているのが有名だが、人体に有害な水銀を放出するので、現在は使われていない。
平等院では「平成の大修理」中に神居文彰住職が、鳳凰堂内の本尊・阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)の後光を表現する「光背」のつり金具と座金(いずれも鉄製)に、金色の斑点を見つけた。
◇「通常あり得ない」仮説立て調査
神居住職らは「光は全ての人々を救う如来の象徴であり、堂内は金で飾られていたはずで、金具も例外ではないだろう」と考え、通常あり得ない金メッキがされていたとの仮説を立てた。その後、2020年の鳳凰堂の修理作業で足場が堂の天井近くまで立てられた際、屋根を支える部材「組物」に取り付けられているL字形の鉄製部材(露出部約8センチ)にも、同様の金色の斑点が見つかった。
平等院は今回、国立文化財機構・東京文化財研究所の早川泰弘副所長に、これら鉄部材の調査を依頼した。国宝のため素材を削って鑑定することはできず、蛍光エックス線を使って調査。金が多く検出された8カ所で、水銀を同時に確認した。以前には、光背のつり金具でも同様の結果が出ており、今回の調査で、金メッキの可能性が高まったという。
酸化しやすい鉄は、アマルガム鍍金を施すのが困難だと考えられてきた。鳳凰堂でも、屋根の鳳凰や棟飾り「露盤宝珠」に金メッキがされていることが分かっているが、いずれも地金は青銅だ。
早川副所長は「これだけでアマルガム鍍金だと立証された訳ではない。同じ質の鉄に施すことができるかなど、さらに実験が必要だ」とした上で「金・水銀の量や堂内の色彩から考えても、鉄がむき出しでなく、金メッキなどの装飾がされていた可能性は検討すべきだ。文化財史の重要なポイントであり、研究を進める必要がある」と説明した。
神居住職は「アマルガム鍍金はできないという先入観があり、全国の文化財修復で鉄材は削られてしまうことも多い。今後の文化財修復・保存のあり方をも変える発見で、調査をさらに進めたい」と話した。