石見銀山舞台、女性の一代記 直木賞の千早茜さん
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デビュー15年の千早さんは、初の長編時代小説で8年ぶり3度目の候補となった直木賞を射止めた。
受賞作は、戦国末期から江戸初期の石見銀山を舞台に、女ながら間歩(まぶ)(坑道)で働き、銀掘(かねほり)の妻になった女性の一代記。
石見銀山に旅し、「石見の女は三たび夫を持った」と聞いたのがきっかけ。銀山で胸を病み、早くに死んでいった男たちと、看取った女たちへの「なぜ(ここで)生きたのか」という問いの答えを求め、小説に。「現代ものでは無理」と7~8年温めた後、小説誌で「今までで一番連載期間が長い作品」に結実させた。
時代小説の言葉や人物設定に苦労したが、先輩作家たちから「一つ抜けたね」と評価された。自身、「設定していたより大きいラストに持っていけた。長い作品を書いてこそで、そこまでいけたのは初めて。ちょっと抜けられたんだなと。とにかく書いてたどり着くしかないと思わせてくれたありがたい作品です」。
親の仕事で小学生時代をアフリカで過ごした。本が好きで、日本の祖父母から月に5冊届いたが、「あっという間に読んじゃって、日本には本が少ないのか、じゃ私が書こうと思った」と作家志願の始まり。
デビュー作で熱望していた泉鏡花賞を受賞。「目標がなくなる」と茫然(ぼうぜん)としたが、その後も着実に作家の道を歩み、小説、エッセーなど「最近は本当にしたい仕事ができている」なかでの直木賞受賞。
事前取材で直木賞について、「受賞する人は直木賞作家の役割を果たせないとだめ。太い作品が書けるとか、小説家としてのふるまいができるとか。私が果たせるようになるのか」と話しつつ、受賞作執筆で「今後もうちょっと太く、大きくやっていけそうだな」との手応えもつかんだ由。役割を果たす番が来た―。(三保谷浩輝)