棟方志功「板画」の神髄探る 生誕120年大展覧会 疎開先の富山
棟方は青森県に生まれ、少年時代にゴッホの絵画に出会い感動し、「わだばゴッホになる」と画家を志した。21歳で上京し、徐々に絵画や板画で注目を集めるようになった。極端に版木に顔を近づけて一心不乱に彫刻刀で刻む姿は有名。1956年、ベネチア・ビエンナーレで国際版画大賞を受賞すると世界的にもその名を知られるようになり、今でも人気は高い。棟方は自身の作品を「版画」ではなく「板画」と呼んだ。
同展では、芸術家としての棟方に大きな影響を与えた青森、東京、富山の三つの美術館が協力して開催。福光での疎開時代は、板画以外の才能を開花させた重要な時期。版木の入手が困難だったことや、寺などからふすま絵や書の揮毫(きごう)依頼が多かったことなどが要因と考えられ、今でも地元には多くの作品が残る。
会場には、福光を訪れた柳宗悦が自らのコレクションとした書「慈潤」、46年に福光の新居完成時に柳ら著名人が寄せ書きした風呂先びょうぶなど福光時代をしのばせる作品から、ベネチア・ビエンナーレ出品作「二菩薩(ぼさつ)釈迦十大弟子」まで棟方ワールド全開。横幅約26メートルもある巨大な板画「大世界の柵」は、倉敷国際ホテル(岡山)のロビー壁画として制作され、大きすぎたため2分割されて今も吹き抜けを飾っている。
会場を訪れた棟方の孫で研究者の石井頼子さんは「福光時代は志功の折り返し地点で、短いけれど扇の要のように大切な時間。志功がどんな風に作品を作っていったか、そしてどんな人だったかを見てほしい」と話していた。入場料は一般1500円など。水曜休館。作品は18日までの前期展と20日からの後期展で分けて展示される。