ザ・インタビュー 東に対抗 大阪と組めるか 作家・映画宣伝プロデューサー 篠友子さん著『うえから京都』
自身は高知県生まれ。京都の男性と結婚し、京都で約10年暮らした。「ほかの都道府県に比べてプライドの高さが突出している。なぜそこまで、ということが多々あった」と客観視する。
京都を国政の拠点として返り咲かせよう。そうもくろむ京都府知事の桂と長老たちの密談から物語は始まる。ウイルスが猛威を振るった後、国政の混迷に業を煮やした桂らは大阪や兵庫の知事と首都分散を目指す。
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東に対抗するためとはいえ、京都が仲の悪い大阪と手を組むのは難しい。そこで、3府県同盟の立役者となるべく招かれたのが主人公の坂本龍子。政界の交渉人として名をはせる高知県職員という設定だ。薩長同盟から着想を得たが、「坂本龍馬は出尽くしている。だったら女性にしようと。パクリと分かるように『坂本龍子』にしました」。
ストーリーを盛り上げるのが、京都人と大阪人との嫌みの応酬だ。関西人なら話のネタと承知しているものの、奈良や滋賀も巻き込んで書き上げた後、「関西の人が怒るのではないか」と少々気になったという。
折しも中央省庁の一つ、文化庁が今年度内に京都へ本格移転する。本書の帯には、京都の府・市・商工会議所で構成する移転準備実行委員会からの提案で「文化庁京都移転ロゴマーク」が掲載されており、実話を基にしたようにも見える。
本物の知事を想起させる大阪府の吉岡知事や東京都の池永知事も登場するが、「あくまでフィクション。読み手は結び付けて考えると思うので、イメージさせるような名前にした」。
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小説を書き始めたのは約1年前。60歳だった。コロナ禍の影響で映画宣伝プロデューサーとしての忙しい日々が一転。仕事が減り、不安にさいなまれていた。
「政治の無策にこの国は大丈夫か、このぐらい大胆なことをやらないと変わらないと思った。セリフの中に、国に対する疑問がにじみ出ているかもしれない」
映画宣伝の経験が生きた。念頭にあったのは、埼玉県をけなす映画『翔(と)んで埼玉』(平成31年)。公開当時、テレビで宣伝を見て「(関西を舞台にしたら)『うえから京都』がおもしろい」と言ったら家族に受けた。映画化したいと、温めていたタイトルだった。
物語はマーケティングの視点から考えた。「埼玉の人口で興行収入が30億円か40億円。県民全員が見たくらいの勢い。それに匹敵するぐらい盛り上げるには京都だけでは勝てない。京阪神でくくったら人口は東京に匹敵する。もう少し足して…」
映画化に不可欠なイケメン枠を設定。龍子を支える年下の秘書役を配し、「胸がキュン」となる場面も設けた。「映像として頭の中にある企画を、一つずつ文字化していけたらいい。坂本龍子も成長させていけたら」
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しの・ともこ 昭和35年、高知県生まれ。18歳から27歳まで京都で暮らす。東京へ移って起業。映画のフリーペーパー発行などを経て平成24年に株式会社MUSA(ムサ)を設立し、100本以上の邦画の宣伝に関わる。小説は本書がデビュー作。