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「事件やニュースに自分が選ばれているような感覚がある」。リトグラフ作家・法廷画家 松元悠インタビュー
2023-07-12
「事件やニュースに自分が選ばれているような感覚がある」。リトグラフ作家・法廷画家 松元悠インタビュー

リトグラフ作家の松元悠(まつもと・はるか)は、マスメディアが伝えるニュースの現場を訪れ、被疑者や関係者の姿を自画像として描くことで、報道では取りこぼされたリアリティを現前させる。また近年はアーティストの活動と並行して、法廷画家として被疑者の姿を伝えている。町田市立国際版画美術館で7月17日まで開催中の展覧会「出来事との距離 -描かれたニュース・戦争・日常」で作品を出品中の松元にインタビューし、活動の背景について話を聞いた。


──そもそもなぜ、松元さんは数ある手法のなかでリトグラフを選んで続けてきたのでしょうか?

元々はマンガやイラストに興味があり大学のオープンキャンパスに行ったのですが、たまたま見た版画専攻の先輩方の作品が良かったんです。それでなんの知識もなく大学に入って版画を学んだという情弱なきっかけです(笑)。実際にリトグラフをやってみたら、技術や手技を追求していく楽しさにはまりました。木版画って彫って入魂するような力強さがあるんですけれど、リトグラフってそういうアウラ的なものはほぼない。生っぽさが感じられないのもすごくいいなと思ってます。

あとは、日本では明治期にリトグラフが登場したタイミングで新聞も始まって、山本松谷(昇雲)をはじめとする「報道画家」と呼ばれる人たちが現れたことを知りました。その後すぐに写真が登場するので報道画家の歴史は短いのですが、ニュースが絵になり、それがリトグラフで刷られていたということにシンパシーを感じました。

──元々興味があったのは、イラストやマンガだったんですね。松元さんがニュースを題材にするきっかけはどのようなものだったのですか? 実際にニュースの現場に行ってそこで得た情報も作品に取り入れていますね。

母親がワイドショーを家で見ていて、虐待のニュースで泣いていたことがきっかけです。全然会ったこともない子供で親がどんな人か知らないのに、情報の受け手である母親の頭の中では当事者のイメージが作られて、そのイメージのなかで泣いている、泣けてしまえている。ニュースって、まったく出会ったことのない人たちの情報が自然に入り込んできて、何度もその情報をこちら側に刷り込んできますよね。そういうときの、情報の受け手側の感情伝達のされ方に興味を持ちました。

版画って情報や消費社会を嘆いているような作品が多いイメージがあるのですが、嘆くよりもむしろ、間接的に人との接点となるようなマスメディアの文化を肯定的にとらえたい、そこの可能性を探れないかというところがあります。だから私は現地に出向きます。ニュースが作る情報から抜け出してもっと深いマスコミュニケーションをやっていきたいんです。

──ネガティブにとらえられがちなニュースや報道の在り方を肯定的にとらえたいという理由なんですね。

はい。ただそのいっぽう、自分も以前あるニュースの当事者になったことがあり、匿名掲示板でそのことについて書かれ、言葉の暴力を感じたことがあります。肯定的にとらえたい反面で暴力の記憶もあり、でもやっぱり作ってしまう自分もいる。そのせめぎ合いというところで、いまは作品を「作れてしまっている」というのが正しい言い方かもしれません。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/a78d746a4d8c6a06082340f81801e2bcb548ef1c

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