金糸の輝き 4年がかり取り戻す 京都天龍寺「大涅槃図」修復
金糸のほか21色の上質な絹糸で、釈迦や嘆き悲しむ衆生の姿が細やかに表現されているが、糸が擦り切れたり画面が波打ったりと傷みが目立ち、2018年から保存修理を行っていた。
制作は江戸前期の17世紀後半と見られ、山川暁・京都国立博物館工芸室長(染織史)によると、同じ頃に多数作られるようになった大画面の刺しゅう涅槃図のなかでは「抜きんでて精緻でトップクラスの品」。涅槃に入る場面だけでなく、釈迦の生涯の事績を表す「八相図」が左右に加えられているのも、他に例のない特徴という。
表具には、江戸時代の武家女性の夏の正装である腰巻(こしまき)が転用されており、全体の大きさは縦4・35メートル、横3・37メートル。文化財修理工房の松鶴堂(東山区)では、広げられるだけのスペースを工房内に作って修理を引き受け、約10人の技術者で約4年かけた。刺しゅうを留め直し、失われた部分に絹を補い、裏から紙を打ち直したことで、毎年3月15日の涅槃会で用い続けられるようになり、図像もより見えやすくなった。
寺は「輝きも増し、ぜひご覧いただきたい」としている。八方にらみの雲龍の天井画で知られる法堂(はっとう)で26日まで。午前9時~午後4時半(同4時20分まで受け付け)。500円。【南陽子】