建築家レーモンドの青図など資料300点超 大阪で90年ぶり発見
◇「お宝 よくぞ見つかった」
レーモンドは旧帝国ホテルなどを設計した巨匠フランク・ロイド・ライトの弟子。21年の独立後に開設した設計事務所では、前川国男らが学んだ。その前川も設計に関わった聖母女学院の校舎は鉄筋コンクリート造りで、32年の完成後、34、37年に増築。戦時下の空白期を経て、戦後も増改築が繰り返され、現在に至る。スパニッシュ風やアールデコ様式を取り入れつつ、37年増築の小体育館(現トレーニングルーム)では装飾性を排したモダニズムを実現するなど多彩な表情が特徴。校舎の一部は97年、国の登録文化財になっている。
資料群は2回に分けて学校の倉庫で見つかった。まずは2020年11月、筒状に巻かれた大判の青図などが、翌21年11月には大量の設計資料が収められた木箱二つが新たに発見された。箱の中には、裏面に「1930」(年)と押印された第1期校舎の初期配置を示す青図をはじめ、設計事務所から現場に宛てた指示書や書簡、業者の施工図などが入っていた。さらに、レーモンドが29年に手がけた清心高等女学校(現ノートルダム清心女子大、岡山市)の校舎の青図も含まれていた。レーモンド設計事務所(東京)の三浦敏伸・代表取締役は「事務所に(青図の)一部の原図はあるが、青図そのものはなく大変貴重。これだけのお宝がよくぞ見つかったという驚きがある」と話す。
資料を見つけた香里ヌヴェール学院中学校・高等学校の田村かすみ副校長は発見時、「この青図は美しい、多くの人に見てほしい」と感じたという。同校がフランスの修道女7人によって創立されたことに言及し、「日本の少女のために集まった修道女や図面を手で引いた設計士、戦中に学舎を守り抜いた教職員、そして同窓生など90年にわたる人々の思いがこの建築を今に残した原動力であり、美しい青図がその象徴だと思う。見つかった資料は、そうした物語を社会に提供する貴重な遺産」と保存の必要性を訴える。
資料のうち最初に見つかった大判の青図約60点の中には、戦争で金属供出された初代正門の図面なども含まれており、京都工芸繊維大美術工芸資料館で全てデジタル化された。一方、木箱にあった膨大な資料の全容は不明で、今後の調査が待たれる。松隈教授は「誰がどういう意図で残したのかという謎は残るが、このタイムカプセルには建築に注がれた当時の人々の熱意が詰まっている。生きた教材としてここで学ぶ生徒たちに伝えてほしい」と話している。【清水有香】