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「読み終えることのできない本に出会う」とき、可能性の花が開く
2022-12-31
「読み終えることのできない本に出会う」とき、可能性の花が開く

 浄土真宗の僧侶にして宗教学者の釈徹宗氏。批評家・随筆家にしてキリスト者の若松英輔氏。

 「信仰」に造詣の深い当代きっての論客二人が、「宗教の本質」について書簡を交わす本連載。

 釈氏が「読む」ことの宗教性について思索をめぐらせた前回の書簡(第五信・A)に対する、若松氏の返信を公開する。

 第一信・Aはこちら
 たいへんお待たせいたしました。申し訳ございません。その間、テレビの収録でお目にかかることもありました。

 すでにお知らせしましたように今年(二〇二二年)の三月で、大学を退職いたしました。辞めるにはそれなりのおもいがあるのですが、内的には若い人たちに言葉を届ける試みも大学に固執する必要がないことがはっきりしたというのが、もっとも大きな要因でした。

 この八ヵ月ほどの生活の変化は、これまでの人生でもっとも大胆なものの一つで、この書簡のペンをとることのないまま、時間が過ぎてしまいました。とはいえ、釈さんほど多忙ではないのですが、非力であることを痛感しております。

 さて、往復書簡を行っているあいだは、極力会わない方がよい、と申し上げたことがあるかと思います。

 それは、待つ間、たとえ、ペンを動かしていないあいだも、相手のこと、あるいは深めようとしている問題を感じることができるからで、お手紙申し上げなかった間、「読む」とは何かを考え、さまざまなところでの釈さんのご発言にも学ばせていただきました。

 お手紙に書いてくださいましたように「読む」とは何かを考えるとは、自分にとっての人生の一冊を見つめ直すことであり、19世紀フランスの詩人たちの言葉を借りれば、霊感(インスピレーション)の源を探ることでもあります。

 現代人は、「読む」とは何かを深く感じる前に何を読むのかに心を砕きがちです。なかには読書法に関心を寄せる人もいます。しかし、まず、考えてみなくてはならないのは何を読むのかではなく、「読む」とは何かであるように思うのです。

 これまで「信じる」とは何かという問題をめぐっても考えを深めてきました。仮に、信じるとは何かを感じ入る前に、何を信じるべきかを考え始めるとします。そこに待っているのは、とても恐ろしいものである場合があるのは、昨今の社会事情を見ても明らかです。信じるとは何かにおもいを致さないで宗教に対峙するとき、人は、真に宗教と呼ぶべきものと「偽・宗教」と呼ぶほかないもののあいだで耐え難い苦しみを経験することすらあると思います。

 ある僧の本を読んでいて、とても興味深い言葉に出会いました。昨今は、宗教は信じる対象であるよりも学ぶ対象になった。人々も「教養」の話をもとめ、「信心」の話を遠ざける、というのです。

 教養としての宗教に向き合うのは無意味だとはいいません。しかし、そこにあるのは、剥製としての宗教で、生きた宗教ではないかもしれません。祈りとは何かを解説されても、祈りの本義は伝わってこない。それは、蝋細工の食べ物を味わおうとしているのに似ているかもしれません。見た目は近似している。しかし、そこにはいのちの躍動も匂いも存在しないのです。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/c00144798876b704b4660fbd02d00cd5d29f6e33

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