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鴇田義晴 「別冊宝島」「Talking Loft:「文藝別冊」……ムックに刻印された90年代文化
2022-03-29
鴇田義晴 「別冊宝島」「Talking Loft:「文藝別冊」……ムックに刻印された90年代文化

 村崎百郎論で2022すばるクリティーク賞を受賞した鴇田義晴さんが、90年代のカルチャーと併走した当時のムックを論じます。そこからは時代の空気なども感じ取れるはずです。
(『中央公論』2022年4月号より抜粋)
「雑誌は時代を映す鏡である」と言われる。その言葉の通り、ある雑誌のスタイルが流行れば、無数の類似誌が生み出され、シーンを形成し、一つの時代を形づくってきた。

 特定の時期に多く発行された出版形態に、1990年代のA5判型サブカルチャー系ムックがある。ムックは「magazine(雑誌)とbook(書籍)の合成語。発行・流通の形態が雑誌に準じ、編集の仕方や体裁が雑誌と書籍の中間であるような出版物」(『広辞苑』)と定義される。A5判は本誌『中央公論』をはじめ、文芸誌、論壇誌、総合誌などが用いるサイズである。これらの雑誌が取り扱う内容は硬派なものが多いが、90年代のムックは雑多なアプローチが特徴だ。

 A5判ムックの嚆矢となったのが、1976年に刊行をスタートした『別冊宝島』シリーズだろう。JICC出版局(現・宝島社)から90年代は月数冊のペースで発行されていた。長らく編集長を務めた石井慎二は、『別冊宝島』を作るにあたり、写真やイラストを使ったビジュアル重視のムックに対抗する、活字主体の「読むムック」を志向したという(※1)。

 90年代の『別冊宝島』は警察、自衛隊、宗教団体などの内情に迫るムックを多く発行し、タブー破りを試みたが、その根っこには既存の出版業界に対するカウンター意識も存在していたと言えそうだ。

 後を追うように、90年代後半になると各社からA5判のムックシリーズが次々と刊行される。ざっと挙げるだけでも『特集アスペクト』(アスペクト)、『好奇心ブック』(双葉社)、『ワニの穴』(ワニマガジン社)、『オルタブックス』(メディアワークス)、『裏モノの本』(三才ブックス)などが並ぶ。まさに群雄割拠であろう。

 なぜこれほど多くのレーベルが乱立したのかといえば、背景には出版バブルの影響が挙げられる。90年代後半は、バブル崩壊後から続く平成不況のイメージが強い。だが、出版バブルは遅れて到来しており、96年に売上高のピークを記録している。この勢いに乗り、各社がムックを刊行していったのだろう。

『別冊宝島』は99年10月発行の『よみがえる幕末伝説』(463号)でA5判から一回り大きなB5判へサイズを変更する。この変化をブームの一つの終わりと位置づけられるかもしれない。ただし『別冊宝島』に限っても400点以上が刊行されているため、90年代のサブカルチャー系A5判ムックの全容を本稿の紙幅で捉えることは難しい。そこで本稿では任意の何点かを取り上げる形となるが、それでも時流を色濃く反映したムックから、時代を浮き彫りにできればと考えている。なお、ムックの厳密な定義は書籍に付与されるISBNコードを保有したものに限られるが、本稿では雑誌コードが付与されていても内容的にムックとみなされるものは取り扱う。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/37511619fbfebfefb7ce2253e0376a6545be322a

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